2018年3月3日
厳しい冬がやっと終わりを告げ、温かい桃の節句となりました。この日、文京学院大学保健医療技術学部作業療法科教授 神作一実先生による講演会を開催しました。神作先生は嚥下リハビリテーションの第一人者です。40名近くの聴講者で教室は満席となりました。先生のユーモアたっぷりで明るく気さくなお話に、皆さん聞き入っていらっしゃいました。
私たち東京パイロットクラブは、介護をしている人たちを支えるために情報を提供しようと、毎年講演会を開催しています。昨年の3月の講演会後、今後聞きたい話として「健康寿命について聞きたい」「健康寿命を延ばす方法を知りたい」といったご意見を沢山いただきました。これにお応えする形で、健康に直結する「食事」をテーマに選びました。
「楽しいことをしているうちに、いつのまにかできるようになった」というリハビリが作業療法だそうです。神作先生は辛いこと、我慢することが大嫌い!テニスを楽しんでいるうちに心肺機能が鍛えられるようなリハビリを目指して、患者さんにいろんな工夫をしているそうです。
安全でおいしく楽しい食事を続けるためにはどんなポイントがあるのか、嚥下リハビリテーションの専門的な内容を、私達にも理解できるようわかりやすく、実例を織り交ぜてお話しいただきました。食べるという何気ない行為が、実は舌や喉をはじめとしたいろんな機能が上手に働いてはじめて可能なこと、その方の口の機能に合わせた形態の食事がまず安全を支えるというお話でした。そして結婚式のような大切な場面で必ずごちそうが出るように、食事の楽しさは人との交流の場としての食事という側面も大きいというお話をいただきました。
逆に、食べたくないときの食事は楽しくないので、「食べたくない」という気持ちも尊重しましょうという話にはドキッとしました。介護する側としてはついつい「食べてほしい」という気持ちにかられがちです。スプーンの使い方ひとつとっても、自分がやられて嫌なことはしない、というとても大切なアドバイスでした。
介助補助食、トロミ、ゼリーのもと、食器など、具体的な情報や使用方法などを多数教えていただきました。きいたその日から自宅介護に役に立つ知識をご提供いただき、聴講者からも感謝の声が届いています。中にはすでに両親の介護を終えた方からの「もっと早く知りたかった」というご意見もありました。
最後に神作先生から「もし、皆さんの周りに病気のお子さんなどの介護に追われている人がいたら、ぜひ『介護を他の人にちょっとだけ任せて、一緒にランチしよう』と誘ってください」というお話がありました。作業療法は頑張らないのがポイント、介護だって頑張りすぎないのが大切。そして、楽しい食事をとることでケアテーカーもリフレッシュできます。明日からでも実践できる「介護をしている人を支える」やり方ですね。神作先生の温かいお人柄が伝わってくる講演会でした。神作先生、素晴らしいお話をありがとうございました。